いけないよくないカミングアウト大作戦
(この記事は2011年当時のものです)
皆様こんばんは。 もうお盆休み直前ですね。おそれていた東京の真夏の大停電は今のところ起こらず、平穏に過ぎているようです。 さてさて、思い出話のラスト2回はカミングアウトのお話です。
ふたたび「ゆきの花」
7月の2週目の土曜日、わたしはふたたび西日暮里の「ゆきの花」に来ていました。
先 週持ち込んだOLさんブラウスとタイトスカートはどうも体形に合っていないのがはっきりしたので没にして、今度は古着屋さんで見つけたカットソーとインド 綿のマキシスカートを用意してリベンジです。
(この写真はいろいろふっくらしてます。2022年現在から見ると8キロほど多かったはずです)
今日はもう一人お客さんがいます。S嬢はわたしより少し年上で、3か月くらい前にデビューしたそうです。彼女のフットワークはとにかくすごくて、たちまち浅草界隈では知らない人はいない有名人になっていきました。
最初の頃の人脈はみんなこの人から発生してて、カラオケルームに焼肉屋、夜の公園に男のサウナと、あちこちに連れて行ってもらいました。でも彼女はその後1年くらいして消息を絶ってしまいました。一説によると奥様にバレたのだとか。今もお元気でしょうか…。
さて。
今度はわたしも一人でメイクしてみます。だいぶ手際が良くなったとママにほめてもらいました。
で、ハイヒールでの歩き方とかをトレーニングして、そろそろ着替えなくちゃというところになったのですが、ここまで時間をかけて着込んで塗ったものを落としてしまうのは惜しい気がします。「ねー、ママにSさん、この格好で電車に乗れるかな」「あー、いいんじゃない?あとは態度次第よ。堂々としていれば問題ないわ」
いきなり初外出!
決定。このままの格好で帰ることにしました。
外出というのはとても敷居が高いと思っていたので、お店のエレベーターを出るところから超どきどきです。でも、夕暮れ時に西日暮里駅にむかって山手線から人が吐き出される人波に逆らって歩いていると、だれもが一瞬で通り過ぎるので誰も気付く暇がないみたいです。ホームに上がってみても、みんな携帯を眺めていて周りの人に注意を向けません。
電車に乗ると、密集した人の中でじっとしてるので心細くなってきます。
わたし、でかいですからねー。当時の靴だと身長が180センチくらいになるので、周りの人の頭のつむじが見えてしまいます。平然としてなさいというママのアドバイスを守って、遠くを見てきょろきょろしないようにしているので、どれくらい視線が自分に向いているのかはわかりません。
でも、向かいの席の人がわたしを上から下までスキャンしています。眼があったらそれからはこっちを見なくなりました。早く降りろって念じます。 地下鉄にも無事乗り換えられました。新品のパンプスがちゃんと合っていなくて足が痛いです。
(結局このニッセンのパンプスはどう工夫してみても足が痛いので、半年くらいでお払い箱になりました。ニッセンのアイテムは結局どれも使えませんでした)
この格好で滑って転んだりしたらとても恥ずかしいので、どこを歩くにも緊張します。が、これなら10分くらいは歩いても大丈夫でしょう。
近所に住んでいる、大学時代からの相棒のK氏に電話します。
「あーもしもし葛城です。いま空いてる?それじゃ10分後くらいにちょっと伺います。」
そして10分後。
「ぴんぽーん。がんがんがん。来たよー」
ドアが開きます。顔を出した彼は
誰?
って怪訝な顔をして。あれは宗教屋さんか保険外交員のおばさんを見る目つきだったと思うのですが。10秒くらいして、何かが仕組まれていると気が付いたようです。
視線をすばやく左右に走らせて、かつてのわたしとの共通部分を探しています。 1分くらいかけて上から下まで眺めて、思わず声をもらしました。
「…すげー」
やったね!わたしはガッツポーズです。彼がうちに持ち込んできたマンガや小説には女装モノもしばしば混じっていて、以前の記事にでてきた女装の同人作家さんとの出会いも彼のブースにお手伝いに行ったのが発端です。しかしこういう形で自分のところにブーメランが戻ってくるとは思いもしなかったようです。
大学から十数年のつきあいですが、今回の仕掛けは最大級のヒットになりました。
今回の彼の場合はアートな活動でも私生活でも大体何でも話し合う仲で、この生活の変化をどうしても知っておいてもらわないといけません。それに口も固いので、噂が広まる心配もないので理想的な相手だといえます。
しかし最近は、彼はどんな格好をしていても驚いてくれなくなりました。ちょっとつまらないです。
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